この記事では、2002年アメリカの動物園で、肉食動物に与えている餌の成分を調べてまとめた論文の内容を紹介します。
文章は全て英語で書かれているので読むのが大変ですが、論文に掲載されている栄養成分の表を見ることで色々見えてきます。
見にくいので、少しわかりやすくまとめてみました。(図1、2、3を改良)
タンパク質、脂質、灰分、総エネルギーについて
protein(タンパク質)
マウス70.3% うずら71.5% ひよこ64.9%
うずらが一番タンパク質の割合が多いです。
fat(脂質)
マウス30.1% うずら31.9% ひよこ22.4%
一般的にマウスが一番脂質が高いと言われていますが、うずらの方が高いことがわかります。
Ash(灰質)
マウス12.9% うずら9.9% ひよこ6.4%
いわゆるミネラルであり、カルシウム、鉄、ナトリウムなどが含まれます。
こちら、マウスが全てのサイズにおいて、ひよことうずらを超えた%を示していることがわかります。
総エネルギー
マウス6.65kcal うずら6.79kcal ひよこ5.80kcal
ビタミンA ビタミンEについて
ビタミンとは
人体の機能を正常に保つため必要な有機化合物です。
脂溶性ビタミンはA、D、E、Kの4種類、水溶性はB1、B2、ナイアシン、B6、B12、葉酸、パントテン酸、ビオチン、Cの9種類です。
脂溶性は体に蓄積しやすく、過剰摂取すると腎臓や肝臓などの内臓障害になる可能性があるので注意する必要があります。
水溶性のものは一般的に尿とともに排泄するから摂りすぎても問題ないと言われています。
ビタミンA
マウス578272 うずら70294
脂溶性ビタミン 目や皮膚の粘膜を健康に保ったり、抵抗力を強めたりします。
ビタミンE
マウス173.9 うずら66.8
強い抗酸化性作用があり、生体膜の機能を正常に保つことや、赤血球の溶血の防止、生殖を正常に保つことに関与しています。
さまざまなミネラルについて
ミネラルとは
5大栄養素の1つ(タンパク質 脂質 炭水化物 ビタミン ミネラル)
以下の元素がヒトにとっての必須ミネラルです。
ホウ素 ナトリウム マグネシウム ケイ素 リン 硫黄 塩素 カリウム
カルシウム クロム マンガン 鉄 コバルト 銅 亜鉛 セレン モリブデン ヨウ素
カルシウム
マウス4.05% うずら3.43% ひよこ1.69%
骨格の形成、筋肉の収縮に関与します。
リン
マウス1.72% うずらNA ひよこ1.22%
カルシウムとともに骨格形成、エネルギー代謝に関与します。
マグネシウム
マウス0.16% うずら0.06% ひよこ0.05%
骨の形成、体内の酵素反応、エネルギー産生に関与します。
ナトリウム
マウス0.24% うずらNA ひよこ0.71%
体液の浸透圧や酸・塩基平衡を調節、神経や筋肉の興奮伝達に関与します。
カリウム
マウスNA うずらNA ひよこ0.80%
体液の浸透圧や酸・塩基平衡を調節、神経や筋肉の興奮伝達に関与します。
腎臓病の場合は摂取量の制限が必要です。
銅
マウス19.2mg うずら2.6mg ひよこ5.2mg
エネルギー生成や鉄代謝、神経伝達物質の産生、活性酸素除去などに関与します。
人の場合、妊娠時や授乳時に必要量が増加します。
鉄
マウス200mg うずら74.9mg ひよこ119.5mg
ヘモグロビンや各酵素を構成します。
人の場合妊娠時必要になります。
亜鉛
マウス98mg うずら53mg ひよこ97.4mg
各種酵素を構成し、遺伝子の複製などに関与します。
マグネシウム
マウス13.1mg うずら6.4mg ひよこ3.9mg
表を見てわかったこと
表を見ると、ビタミンやミネラルはマウスに多いことがわかります。
脂質とエネルギーはうずらよりもマウスの方が低いようです(うずらの卵や頭など除いた値ではないので注意)。
マウスにおいては、サイズの違いで栄養素の含有量も変わってくるのでこの表をみながら考えて与えると良いかも知れません。
カリウムはひよこに多いことに驚きました。
カリウムを取りすぎると、腎機能が低下するといわれています。
尿酸値がひよこだと高くなりがちなのは、カリウムの量が多いからなのかもしれないなと思いました。
データの見方と注意
このデータを見て、高栄養のマウスが一番いいなと感じますが、少し落とし穴もあります。
これらのデータは餌全体の成分量であり、可食部のみの値ではありません。
マウスでいえば消化器を除き、うずらは消化器や卵、頭、その他臓器をとり、ひよこは黄身や消化器を抜き、与えています(それぞれ丸々あげている人もいる)。
可食部だけで再調査したら今回示されたものと、栄養素の含有量が変わってくる可能性があります。
餌の雌雄でも成分が変わってくるのではないかと思います。
中には%表記されている項目があります。ひよこ、うずら、マウスはそれぞれ大きさが違います。
マウスに関してはさまざまなサイズがあります。
厳密に知りたいのであれば、計算しなければいけません。
また、2002年のデータであるところも少し引っかかります。
20年経過した今、栄養素の測定機も精度が上がりNAとなっている値もわかるようになっていることでしょう。
結果はあまり変わらないかもしれないけど、データが古いように感じます。
最新の栄養に関するデータを探しているが見つからない
フクロウに必要な栄養素の研究結果が書かれた文献がないか探しています。
まずはそれらがはっきりしないと、いくら栄養をあげればいいかが見えてきません。
カロリーや脂質だけじゃない、ミネラルやビタミンの取りすぎで栄養過多になり内臓機能が低下する可能性もあるのではないかと思います。
マウスと野ネズミの成分比
他、飼われているマウスと野ネズミの成分の違いについての表もみつけました。
野ネズミはかなり脂肪が少なく、カルシウム:リン比率がちょうど良いので、効率的に骨が形成できることがわかりました。
その他ミネラルも、亜鉛を除き全てにおいて野ネズミが優っていました。
本格的なスーパーフードを作るとしたらしっかりと運動させたマウスですかね?
野ネズミとマウスでは種も違うとは思いますが。
この研究結果を見て何を考えますか?
この研究結果から何を考えますか?
ほとんどの栄養素が多いマウスが一番良いと結論づけることもできるかも知れません。
しかし、この成分はうずらに多い、ひよこに多い、などそれぞれの餌の利点もあげることができます。
また、実際のところフクロウに必要な成分はこれだっていう研究論文をまだ見つけたことがありません。
フクロウの種類によっても必要な栄養素は変わってくるでしょう。
これだけを使っていたら大丈夫という餌は本当にあるのでしょうか?
今後何を選択するべきなのでしょうか??
誰かの真似ではなく自分のフクロウをよく観察して餌を選択する
獣医師、フクロウショップ、動物園、花鳥園、それぞれ経験則から導いた解答があります。
長生きし、状態の良いところを参考に真似すれば良いと言う考えもあります。
しかし、いろんな場所で質問を続けていても、考え方がそれぞれ違うのでさらに混乱します。
科学的に証明された絶対の方法が今のところ見つからないので、それぞれが自分自身で、自分のフクロウにあった食事内容を見つける必要があります。
フクロウによって好みの違いもあるし、体調によっても食事内容は変わることもあります。
例えば、換羽中はタンパク質がいつもより必要になるので、うずらやマウスをあげた方がいいでしょうし、卵を作っているメスのフクロウにはカルシウムの多いマウスをあげた方がいいでしょう。
また、消化機能が低下しているフクロウには、消化に良いひよこを選んであげた方がいいでしょう。
これしかあげないと決めつけるのではなく、柔軟に考えることが大切だと思います。
各食材のメリットとデメリットを理解し、適切な場所で購入し、鮮度を気にし、捌く際は徹底的にリスクを取り除きましょう。
内容をまとめや書籍はこちら
参考にしたブログ記事↓
私たちは与えられた物を食べるしかないの!
しっかり考えて欲しいな。
どの餌も利点、欠点があります。各飼育者、しっかり考えて与えるものを決めているはずです。真意を知らず誰かのやり方を否定するのはやめましょう。もちろん、知識の少ない飼育者に情報を伝えることは良いと思います。
我が家ではどれも少しずつストックして状況を見ながら使い分けています。それでもまだまだ試行錯誤している状況です。やり方は本当に人それぞれです。長い時間をかけて向き合って考えていく内容だと思います。
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